栄養漢方外来
1:栄養漢方外来について
誠友クリニックの栄養漢方外来は、漢方医学と分子整合栄養医学を組み合わせた治療を行います。
栄養漢方外来では、患者さんの症状や体質に合わせて漢方薬やサプリメントを処方し、それに基づいた治療を行います。
漢方薬は単独で使用される場合もありますが、分子整合栄養医学に基づいた血液検査や治療法と併用されることもあります。
栄養漢方外来では、症状の改善や体のバランスの調整を目指して、患者さんと密接に連携しながら治療を行います。
栄養漢方外来では、以下のような症状や健康問題に対応することができます。
- 消化器系の不調や胃腸の不快感
- ストレスや神経系の不調、不眠やイライラなど
- 冷え性や体の不調、疲れやだるさなど
- 婦人科系の不調、生理不順や更年期障害など
栄養漢方外来では、患者さん個々の状態やニーズに合わせた個別の治療を提供します。
また、漢方薬だけでなく、栄養や生活習慣の改善にも力を入れて、健康な体と心のバランスをサポートします。
気軽に相談できる環境で、患者の健康増進を支援することを目指しています。
2:未病とは?
未病(みびょう)とは、病気の前段階や症状が現れる前の段階を指します。
つまり、まだ病気としての症状が現れていないが、身体や心のバランスが乱れている状態を指します。
未病の段階では、まだ病気になっていないため、自覚症状がないことが多いですが、身体の不調や異変が感じられる場合もあります。
未病の概念は、伝統的な東洋医学や中国の伝統医学で重視されてきました。
健康を維持するためには、病気が発症する前の未病の段階での予防や対策が重要であると考えられています。
未病の段階で適切なケアや生活習慣の改善を行うことで、将来の病気や健康リスクを予防し、健康な生活を送ることができます。
未病の段階では、以下のような状態や要因が考えられます。
- 生活習慣の乱れやストレス
- 栄養不足や運動不足
- 睡眠不足や不規則な生活リズム
- 心身のバランスの乱れや精神的な負荷
未病の段階では、自覚症状がないため、健康診断や定期的な健康チェックが重要です。
また、生活習慣の改善やストレス管理、バランスの良い食事、適度な運動など、健康を維持するための取り組みが必要です。
未病の段階で早期に対策を取ることで、将来の健康リスクを軽減し、健康寿命を延ばすことができます。
3:漢方が得意とする症状について
漢方薬が得意とする症状には以下のようなものがあります。
1.消化器系の不調
胃腸の不快感、消化不良、胃痛、便秘、下痢などの消化器系のトラブルに効果があります。
代表的な漢方薬には、五苓散や半夏瀉心湯や六君子湯などがあります。
2.冷え性に伴う不調
体が冷えてしまいやすい方や、冷え性による不快感や疲れ、だるさなどに効果があります。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯や当帰芍薬散加附子などが用いられます。
3.ストレスや自律神経系の不調
ストレスや緊張、不眠、イライラ、頭痛などの神経系の不調に効果があります。
加味逍遙散や柴胡加竜骨牡蛎湯などが代表的です。
4.女性特有のトラブル
生理痛、月経不順、更年期障害など、女性特有のトラブルに効果があります。
桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・加味逍遙散などが代表的です。
漢方薬は、症状の根本的な原因に働きかけ、体のバランスを整えることで健康をサポートします。
分子整合栄養医学に基づいた栄養療法と組み合わせることで、より良い高架を発揮することができます。
4:代表的な漢方薬について
当院でよく処方される代表的な漢方薬について解説します。
- 補中益気湯
補中益気湯は、主に体力がなくて疲れやすく、だるさや食欲不振がある方に用いられます。
胃腸の機能を高め、からだのエネルギーを増やして体力をつける目的で使われます。
コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどの感染後の倦怠感にも効果的です。
- 当帰芍薬散
当帰芍薬散は、冷えむくみタイプの方、特に日頃から貧血気味の女性におすすめです。
体を滋養しながら内側から温めて、水分代謝を上げてむくみを改善します。
生理不順や不妊治療などにも有効です。
- 加味逍遙散
更年期障害や月経前症候群などに処方される漢方薬としてよく処方されます。
ホットフラッシュ以外にもほてりやイライラ、不安感、落ち込み、異常月経、不眠など幅広い症状に効果が期待されます。
- 桂枝茯苓丸
筋肉の緊張や血色の改善、のぼせや足の冷え、下腹部の張りなどに適しています。月経異常や更年期障害などの症状に用いられ、頭痛や肩こり、めまいなどの症状にも役立ちます。
- 五苓散
天候や気圧の変化で症状が悪化する方や、むくみやすい方に適しています。
はき気や嘔吐、下痢、むくみ(浮腫)、めまい、頭痛などに適応し、さらには二日酔いの諸症状やドライマウスなどにも応用されます。
- 酸棗仁湯
酸棗仁湯は、心身共に疲れきっているのに目がさえて眠れない場合に用います。
疲れすぎると、かえって心や身体が軽い興奮状態になることがありますが、そのような不眠に適しています。
- 柴胡加竜骨牡蛎湯
ストレスや緊張によるイライラや不安感、頭痛、胸のつかえ感、めまいなどの神経系の不調がある方に適しています。
心身の緊張をほぐし、リラックスした状態に導きます。
- 抑肝散加陳皮半夏
気虚(体力低下)・血虚(栄養低下)のために、ストレスに対する抵抗性が低下し、軽度な精神的・肉体的な刺激に対しても反応性が高まった状態で、自律神経系のバランスが乱れた方に処方します。
- 温清飲
温清飲は、皮膚がかさつく人や、のぼせ、月経不順、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎などの症状に適用されます。
アトピー性皮膚炎の肌質改善などに役立ちます。
5:漢方薬と栄養について
漢方が得意とする病態は栄養不足と密接な関係があります。
漢方を十分に効かせるには栄養状態も同時に改善する必要があります。
漢方で症状が改善したとしても、栄養状態が改善しないと完全な治癒は望めません。
漢方薬を中止すると症状が再発します。
一方、栄養療法だけでは症状の改善に時間がかかります。
そのため漢方薬を中心とした薬物療法で症状をコントロールしながら、栄養療法を併用することで細胞レベルでの治療を行います。
漢方治療を始める際には、血液検査等で現代医学的疾患の有無だけでなく、タンパク質不足、鉄・マグネシウム・亜鉛などのミネラル不足、ビタミン不足、糖質摂取過剰などの栄養学的異常の有無を把握しておくことが必要です。
6:栄養不足と体調不良について
疲れやすい、風邪を引きやすい、なんとなく元気が出ない、憂うつになる、眠れないなどの心身の不調は栄養不足が原因となっていることも少なくありません。
心身の不調を引き起こす代表的な栄養不足は以下があります。
- 鉄不足
- ビタミンB群・タンパク質不足
- 亜鉛不足
- マグネシウム不足
- ビタミンD不足
- コレステロール不足
7:脳内ホルモン(神経伝達物質)と栄養について
脳内ホルモン(神経伝達物質)と栄養は深く関わっています。
- リラックスした気持ちにしてくれるGABA
- やる気を出してくれるノルアドレナリン
- 幸せホルモンとも言われるセロトニン
- 睡眠の質に関わるメラトニン
などが心身のバランスを保つのに重要ですが、これらの脳内ホルモンの材料となるのが「タンパク質」「ビタミンB群」「ビタミンC」「鉄」「亜鉛」「マグネシウム」などです。
そのため、心身のバランスを整えるためには栄養を十分に補うことが重要になります。
8:エネルギー産生と栄養について
私たちの身体を構成する細胞にはエネルギーを作る工場(ミトコンドリア)があります。
ミトコンドリアでエネルギーを産生するためには、エネルギーの材料となる十分な栄養(脂質、タンパク質、糖質、ビタミンB群、鉄、マグネシウムなど)が必要です。
栄養が不足すると効率的にエネルギーが産生できなくなるため、集中力低下や倦怠感や意欲の低下など「うつ症状」が出てきます。
9:栄養漢方外来で行う検査
オーソモレキュラー医学の理論に基づいて、血液や尿のデータから体の不調を起こしている原因を分析します。
血液検査では50~70項目の詳細なデータを取ります。(保険適用外)
得られた検査結果から、タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン類・ミネラルなどの栄養素が、正しく吸収され利用されているのか、どのくらい不足しているのかを細胞レベルで分析します。
10:栄養漢方外来での治療内容
- 腸内環境改善
最近では「脳腸相関」(=脳の思考や感情が腸の機能に影響を及ぼす一方で、腸の状態が脳の働きにも影響を与える相互作用のこと)が話題になっています。
腸内環境を改善することで、以下のような効果が期待できます。
- 栄養素の吸収効率が良くなる
- ビタミンB群などの合成力が高まる
- 血糖値が安定する
- 腸や脳の炎症を防ぐことができる
- 鉄の吸収効率が良くなる
- 採血結果から導かれる栄養素の不足を補う
「鉄」「ビタミンB群」「亜鉛」「マグネシウム」「タンパク質」「ビタミンD」などの不足に対して、食事指導やサプリメント(保険適用外)の処方を行います。
- 症状や体質に合わせた漢方薬処方
栄養状態も踏まえて、症状や体質に合わせた漢方薬を処方します。
漢方薬の効果を十分に発揮するためには、生活習慣の見直しも必要です。